【禁煙】 禁煙支援を保険を使って行うためのやさしいマニュアル
 禁煙支援マニュアル
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禁煙支援を保険を使って行うためのやさしいマニュアル

のだ小児科   野田 隆

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【 目   次 】

第1章 施設基準をとろう
第2章 実際に禁煙希望者が外来に訪れたら
第3章 再診T(禁煙開始日から2週間目)
第4章 再診U(禁煙開始から4週後)
第5章 再診V(禁煙開始後8週間)
第6章 再診W(禁煙開始後12週間)
【資 料】 呼気中一酸化炭素測定装置について
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第1章 施設基準をとろう

 2006年6月1日よりニコチン依存症の治療が保険を使って行えるようになりました。多くの皆さんの努力の賜物と思われます。
 別にその経緯について、詳細に報告があると思われますが、ここでは、禁煙支援の恩恵をできるだけ多くの人が浴せるように、できるだけ多くの医療機関が施設基準を満たすように、問題点をわかりやすく解説しました。

ニコチン依存症管理料算定のための施設基準とは

  1. 禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。
  2. 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること。
  3. 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置していること。
  4. 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること。
  5. 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。
  6. ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等を、別添2の様式8の2を用いて、社会保険事務局長に報告していること。

実際には

  • 1.と6.は施設基準がクリアされてからの問題ですから、申し込みの際に問題となるのは2.3.4.5.の条件です。
  • 2.は禁煙治療の経験を1例でも有する医師が1名いればOKと読み替えます。
  • 3.は禁煙外来するときに決まった外来の看護師さんもしくは準看護師さんが1名いれば、OKです。
  • 4.は禁煙外来を行うときに医療器具として承認を受けている呼気一酸化濃度測定器が使用可能であれば、OK(残念ながら外国製の2機種しか認められていない。)
  • 5.は医療機関の裁量の及ぶ範囲が駐車場も含めて禁煙であること、です。

申し込みのための提出書類

  1. 特掲診療料の施設基準等に係る届出書(別添2)を正・副2通
    【ニコチン依存症管理料】の施設基準に係る届出と記入。  以下のチェックボックスにはすべてチェックを入れる。
  2. ニコチン依存症管理料の施設基準に係る届出は別添2の様式8の1を正・副2通。
  3. 当該治療管理に従事する医師及び看護師又は准看護師の氏名、勤務の態様 (常勤・非常勤、専従・非専従の別)及び勤務時間を別添2の様式4を用いて正・副2通。
     ただし、詳細は各地の社会保険事務局にお尋ねください。別に設けるQ&Aのコーナーにあるとおり、多くの地方ルールが報告されています。

(注)上記の各届け出書について
 いずれも、私(野田)が実際に用いている宮崎社会保険事務局の様式例にリンクしています。皆さまにおかれては管轄する社会保険事務局のホームページ等で確認願います。
   宮崎社会保険事務局
   宮崎社会保険事務局保険課医療係からのお知らせ(特掲診療料の施設基準)

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第2章 実際に禁煙希望者が外来に訪れたら

A.外来で記入してもらう書類

 京都大学の禁煙外来で使用している 「ニコチン依存症管理料(保険適用)質問表」(初回問診表)(注1)を示します。 この記載内容によって、保険適用がなされるかどうかの篩い分けになります。

【対象患者の4条】

  1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症(5点以上) と診断されたものであること。
  2. ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者であること。
  3. 直ちに禁煙することを希望している患者であること。
  4. 日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会編「禁煙治療のための標準手順書」(以下「標準手順書」という)(注2)に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意している者であること。
  • 最初の質問は 喫煙本数/日 X 喫煙年数 =200を超えるかという項目です。
  • 2番目の質問は、直ちに禁煙することを希望しているかの問いです。
  • 3番目の質問は標準手順書に則った治療を受けることに同意しているものであることを保障する問いです。
  • 4番目の問いは、ニコチン依存症であるかどうかの質問表です。

 この4つの条件が満たされれば、保険の適用患者となります。先人の努力により、ニコチン依存症の治療に保険が適用されることになりました。しかしこの制度は、過渡的なもので、治療成績が悪ければ、後の人がその恩恵に浴せなくなります。いわば、われわれは、トップランナーですから、がんばっていきましょう、という言葉を添えます。

 宣誓書となる記載が1枚目の終わりにありますが、最後に回します。(忙しいと忘れることがあるので、看護師さんか事務の方に診療の最後に確認を頼むこと)
 万一満たされないとしても、禁煙支援ができないわけではありません。従来の自由診療でやればよいのです。

 2枚目からの問診表にしたがって、その人にあった禁煙支援の方法を一緒に考えましょう。

スクリーニング
標準手順書(p4)「一般診療における対象者のスクリーニング」
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B.外来で患者と対面

 まずは、こちらの名を名乗りましょう。そして患者さんのお名前を確認します。次に、禁煙外来を訪れたことを称えましょう。1枚目の問診表で、保険適用かどうかを確認します。

 2枚目は、喫煙状況調査票です。
タバコに対してどのように思っているか、どんなときにタバコを吸っているか、できるだけ中立的な立場で、善悪の感情を交えずに、禁煙を技術的に話し合いましょう。
 クライアントが自分自身を客観的に眺められるように、相手の発語を促すようにしましょう。 禁煙経験のある人には、再喫煙のきっかけを尋ねましょう。同じ状況をつくらないように、アドバイスしてみましょう。同じ過ちを繰り返しやすいのが人間です。
 一つだけ注意しておきたいのは、質問3です。保険適用をされた方は、1ヶ月以内に始めようと思っている以外には、印をつけないでください。

 禁煙支援にはインターネット禁煙マラソンの助けを借りることも、大きな支えになります。インターネット、携帯のメールが使える人には、ぜひ勧めてみましょう。

C.禁煙方法の説明

 標準手順書(p.36〜)には、ニコチン代替療法が薦められています。保険の適用になり、手順書に従った治療に同意された患者さんには、ニコチンパッチが保険適用になります。ニコチンガムは薬局で購入できるため、ここではニコチンパッチの使用法について、述べます。

 貼ったまま、喫煙しないように注意することだけは、危険ですから忘れないでください。
 朝のタバコ欲しさが我慢できない人は、夜貼って寝てもいいですが、少し慣れてくれば、朝に張り替えるようにしたほうがいいでしょう。

 理由は2つあります。
 就眠中にタバコを吸う人はいないので、血中ニコチン濃度の日内変動のリズムが今までと違ってしまうこと、それと悪夢を見ることが多いからとされています。もちろんタバコをやめるために貼るのですから、前述のように朝貼らなければいけないというものではありません。

 朝起きたときに、タバコ欲しさが無ければ、貼るのを少し待ってみましょう。自分でニコチンパッチのやめ時がわかります。

D.禁煙宣誓書への署名と次回来院日の予約

 ここまで、理解が得られて初めて、禁煙宣誓書に署名してもらいます。本人、医師の署名蘭につづいて、支援者の書名蘭があります。本来なら家族の誰かがふさわしいのでしょうが、専従の看護師さんに署名してもらいます。

 私は、ここで呼気中一酸化濃度測定装置の値を次回までの励みにといって、測定していただきます。その値と、次回来院日を診療録に記載します。
 禁煙日誌や禁煙欲求のそらし方などを書いたリーフレット類を手渡します。

スケジュール
標準手順書(p7)「標準禁煙治療のスケジュール」
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(注1)ニコチン依存症管理料(保険適用)質問表(京大病院版/ms-word(doc)/77k)
 インターネット禁煙マラソン(http://kinen-marathon.jp/) 資料ダウンロードのページに所収。なお、上記のファイルについて「出典を明確にした上で、再配布や改訂などを許可します」(pdfに変換することも可)とし、本サイト上で再配布することの許可を著作権者から頂いています。pdfファイルダウンロード

(注2)禁煙治療のための標準手順書(2006年3月)
 日本循環器学会日本肺癌学会日本癌学会 

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第3章 再診T(禁煙開始日から2週間目)

 2)のモニタリングは、初回の外来で使用した呼気中一酸化炭素測定器による患者さんの呼気中一酸化炭素濃度の測定のことです。患者さんの禁煙をテストするという意味合いでなく、禁煙への励みにするという意味でお使いください。
 一気に非喫煙者レベルまで下がった数値を見たクライアントの表情は、いつ見ても支援者を力づけてくれます。

 うまくいっていないときは、そのことを正直に打ち明けてくれたことに感謝し、うまくいくようにお互いに相談する方向へもっていきましょう。(本HPで公開されているアサーションのテクニックが威力を発揮するでしょう)手順書の13ページにも記載されています。

 うまくいっている人の中には、ニコチンの過量症状を経験されるかたがいます。パッチをはがして、局所を洗い流したり、パッチにセロテープを貼ったりして、ニコチン放出量を減らします。そういう人には手順書どおりではなくても、パッチを減量してもかまいません。

 すでに、タバコをやめた効用が現れています。呼吸が楽になった、朝のオェッがなくなった、などです。クライアントの気付きを促しましょう。言われないと気付かないことは、よくあります。

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第4章 再診U(禁煙開始から4週後)

 診察内容は

  1. 喫煙(禁煙)状況や離脱症状に関する問診
  2. 喫煙状況とニコチン摂取量の簡単なモニタリングと結果説明
  3. 禁煙継続に当たっての問題点の把握とアドバイス
  4. ニコチン製剤の選択

と説明というように、手順書には記載されています。

 標準的には、今回から小さいサイズのパッチに変わります。6週目の受診は保険診療を行うための条件に入っていませんから、中サイズを2週間、小サイズを2週間を同日に処方します。6週目には、再診料とパッチ代をいただいて、カウンセリング料を算定しないという医療機関もありますが、はっきりした結論はでていません。したがって4週目には上記のように4週間分処方したほうが、ぶなんでしょう。  このころには、ニコチンの薬理学的依存性というより、手持ち無沙汰で困るとか、食後の一服がないと落ち着かないとかの心理的依存性が前面に出てきます。 
 行動療法的なアプローチ(別掲)が必要とされる時期です。

 早いひとはこの頃から、感覚が鋭敏になるというか元に戻ってきます。散歩をしたときに、何種類かの花の香りをかぎ分けられる人もいるようです。
 前回同様に、禁煙してからのいいこと探しをすすめましょう。

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第5章 再診V(禁煙開始後8週間)

 禁煙の継続をほめること、呼気中一酸化炭素濃度が非喫煙者レベルまで下がっていることを確認すること、禁煙の効用を実感してもらうこと、をします。

 ニコチン製剤の投与中止に当たっての諸注意(予備の製剤を携帯しておくことや過去の再喫煙の状況についての対策など)と一本でも吸ってしまえば、元の木阿弥になってしまうことを告げます。
 禁煙がゴールではなく、健康で楽しい生活を送ることが究極のゴールであることを自覚していただいて、太り過ぎに対する対処についても相談しましょう。

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第6章 再診W(禁煙開始後12週間)

 禁煙の継続をほめること、呼気中一酸化炭素濃度が非喫煙者レベルまで下がっていることを確認すること、禁煙の効用を実感してもらうこと、をします。

 体重増加など、禁煙後に気になることへのアドバイスを送り、禁煙継続への問題点を挙げておく。これまでの努力に対するねぎらいとこれからの人生にエールを送り、いつでも困ったときは連絡をするように伝えます。


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改訂の記録
  • (2006.09.10)一般公開

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